全長13mのバス?

ご存知無い方の為に前置きするが、バスの最大全長は12m迄と法令で決まっている。
また、バスのエンジンは車体の一番後ろにあり型式もリヤーエンジンと表示される。
これをご理解頂いた上で、この話をご覧頂きたい。

某旅行代理店のツアーで神戸遊覧ツアーに行った。
ワンマン乗務だが添乗員も同行する、距離も遠くない・・・実に快適な仕事だ。
平穏無事な一日になる筈だったが、事件は起きてしまった。

5台口のツアーなのだが我が社のバスが3台、N観光のバスが1台、
H観光のバスが1台の混成部隊だ。
混成部隊とは言ってもベテラン運転手ばかりなので、運行上も全く問題はなかった。

処が現地に着くとH観光のバスから大量のオイルが漏れている。
慌てた我々はH観光の運転手とエンジンを点検すると、パワーステアリングオイルのホースが裂けて
全部漏れてしまった様だ。(約6L位)
パワステオイルが無くても物理的にハンドルが切れなくなる事はない。
だが、実際にはハンドルが重くて運転は不可能だろうねぇ。
客が散策している間に現地のディーラーを呼んで応急修理する事となった。
結果、修理も完了し帰路に就くのだが、事件は帰りの休憩で停車した多賀SAで起きるのだ。

H観光の運転手はオイル漏れが気になるのだろう、エンジンルームを開けて点検している。
我々は気の毒になぁ…と思いながらも食事を取る事にした。
暫くしてH観光の運転手がバスを修理に入れたいので、1台だけ先に帰ると申し出があった。
事情が事情なのでやむを得ない、我々はレストランの中からH観光のバスを見送る事になった。
しかし我々の目の前を通り過ぎるH観光のバスを見て、その場に居る全員が目を疑ってしまった。
オイラは食べていたラーメンを噴いてしまい、危うく鼻から麺が出るところだった・・・

何とエンジンルームを閉め忘れ、カバーを跳ね上げたまま走り去って行くのだ。
何故か?
リヤーエンジンなのでエンジンルームを閉め忘れても気が付かないのだ。
慌てて外に出て追いかけたが、走り去るバスに追い付く筈もなく徒労に終わってしまった。
H観光の運転手の携帯番号を誰も知らないし、そのバスの添乗員は携帯の電源を切っている。
もう連絡を取る手段が無い、万策尽きるとは正にこの事だ。

途方に暮れる我々に某運転手が「あいつ全長13mになって帰って行ったなぁ・・・」
「ま、エンジンがよく冷えていいか・・・」とぼやいたのだ。
車体後部のエンジンルームのカバーを跳ね上げる為、後ろへ1m出っ張るのだ。
緊張の糸が切れたのか、全員が大笑いになって少しホッとしたツアーだった。